[Ruby] まつもとさんとまちづくり三鷹さんの講演

今日、港区産業振興課の主催で、麻生区民センターにてまつもとさんとまちづくり三鷹さんの講演がありましたので、行ってきました。

まつもとさんの講演は何度聞いてもおもしろくためになります。内容もさることながら、講演者としての話のされ方も、講師業をしている者として、非常に参考になっています。聴衆を引き込む講演は、演者自身がそれを楽しく話していて、それが聴衆にも伝わって、いい伝播となっているように思います。果たして自分はそれができているのか?自問自答です。

それと、やはりまつもとさんは全国各地で講演が多いからなのか、ガジェットもしっかりされていて、ワイヤレスでレーザーポインター内蔵のマウスを使われておりました。私なんて人前で話すのを商売にしているのに、この辺のところが全然疎いです。でも私も早速これは取り入れたいと思います。

まちづくり三鷹さんとは、「Ruby/Ruby on Rails講師養成講座」で大変お世話になりました。まちづくり三鷹さんの取り組んでいる自治体向け図書館システムは、その目的や背景など、本当に素晴らしいと思います。

自治体のホームページから、なんらかのWebシステムを使うと、いつも思うことなのですが、すぐ隣にある自治体のシステムなのに、自治体毎にシステムが全然違うんですよね。まちづくり三鷹さんのターゲットにされている図書館業務はその典型ですが、施設の貸出とか、そういったシステムはハッキリ言ってどの自治体でも要件にさほどの違いはないわけですね。なのに、すぐ隣の自治体同士であっても、全然違う業者に発注して、全然違うシステムを作らせている。もっと言えば、こういうシステムは全国統一だっていいくらいなのです。

私は大田区に住んでいますが、あるとき落し物をしてしまいました。で、警察に届けられていないかと思って、遺失物の検索システムをWebで見に行ったわけです。大田区は東京都と神奈川県の境にありますから、念のためと思って、警視庁と神奈川県警のWebを両方見に行ったのです。そうしたらシステムが全然違う。使い勝手も違う。全然分かりやすくないんですね。

自治体や官公庁のシステム開発の発注も、いわゆる公共事業のようなものなので、自治体ごとに発注し、地元のITベンダーの雇用を確保する、そういう意図があるのだろうなということはわかります。でも、実態は巨大ベンダーの地域ソフトウェア子会社がかっさらっていき、仕様だけホイホイと決めてさらに下請けに流す、的な建設業界さながらの構造があるだけ、なのかもしれないのです。しかも、ソフトウェアの場合にたちが悪いのは、建設業ならその場に物理的な「モノ」を作らなければいけませんから、まだ各自治体が個別に発注する意味があるわけですが、ソフトウェアの場合はひとつ整った仕組みがあれば簡単に再利用ができるはずなのに、わざわざイチから全部を作り直させるようなことをしているわけです。

いやそんなことを言っても、やはり自治体全部が全く同一の要件でシステムを運用できるわけではない、そういう事情もあるのは事実でしょう。でも、ITシステムなら、サーバマシンはともかく、ソフトの部分に関しては全くイチから作り直す必要なんていうものはないわけです。ベースになる部分を基に、カスタマイズの必要な部分に手を加えれば良い。ソフトウェアに携わったことのある人間なら、誰でも思いつきそうなことです。

前述のまちづくり三鷹さんの場合、ベースとなるシステムに手を入れたければ、ライセンス契約を結ぶことによってこのシステムをベースに開発を希望するベンダーにはソースを公開するのだそうです。そうすれば、カスタマイズのハードルもぐっと下がります。これでさらに、各地方にいる意欲あるベンダーがさらにこのベースシステムにも改良を加え、それをまちづくり三鷹さんのベースシステムにフィードバックできるような仕組みになっていたら(もうそうなっているかもしれませんが、講演ではそこまで言及されていなかったのでわかりませんでした。現地で思いついていれば、質問すれば良かったのですが)なお良いですよね。

※ 完全にオープンソースにしないのは、ソフトウェアの保証の問題などを自治体が気にするから、というようなことをまちづくり三鷹さんがおっしゃられていたと記憶しますが、このモデルを旧来の巨大ベンダーがそのまま横取りしないように守る必要があるのかな・・・と勝手に悪い頭で愚考しました。

こういった取り組みをRubyでやるというのも、また筋が良い感じで、いいですよね。

良いタッグだな、と思いました。