テレビ番組における街の声

8月末のことになりますが、とあるテレビ番組で、夏休みの宿題を代行する業者がいるという話題をとりあげていました。その業者のことについてはこのエントリではふれませんが(思うところはありますけど)、それ以上に気になったのはこの番組に出演していたキャスターの言葉です。

この番組では業者についてひととおりレポートしたあと、「街の声」として、街頭インタビュー映像を流していました。それらの意見は総じて「けしからん」「理解できない」というようなものでした。

これを見ていたスタジオのキャスター(ジャーナリスト)が、こんな感じのことを言ったのです。

「街の声が批判的なものばかりでほっとしました」

私はこのジャーナリストは好きなのですが、この発言はいただけないと思いました。メディア・リテラシーの観点からあまりにも問題のある発言だからです。この発言は、全く無作為にインタビュー映像を、なんの選別もせずに流したものであれば、至極真っ当なものといえるのですが、実際はそうではないのです。

あらゆるメディアには、当事者の悪意の有無に関わらず、何らかの偏向が必ず含まれる、というのがメディア・リテラシーの考え方です。この番組の企画にしても、業者のやり口を紹介した後、街の声が「別にいいんじゃないですか」「私も頼みたい」だったら、この企画自体締まらないわけで、批判的な街の声を優先的に取り上げてバランスを取ろうとすると考えるのが自然です。

テレビメディア側に属するアナウンサーが言うならまだしも、ジャーナリストと言われる肩書きの人がそういう認識でいるというのが、ちょっとショックでした。ジャーナリストも広い意味ではメディア側の人間だからでしょうか。