放送倫理・番組向上機構(BPO)の改革

昨今のメディア報道における捏造問題の高まりを受けて、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)では、「虚偽放送と疑われる事案が発生した場合に、放送倫理上の問題の有無を審理する『放送倫理検証委員会』(委員長=川端和治・弁護士)を5月12日に設立」(「」内は下記ホームページの発表より抜粋)したのだそうです。

放送倫理検証委員会の設立について

(BPOのホームページ)

私は研修講師だけでなく、ITエンジニアの経験もあるのですが、エンジニアがものを作るときの大原則として「作った当人がテストをするな」というのがあります。作った当人がテストをすると、当然ながらその内容が(無意識でも)甘くなってしまうことが懸念されるからですね。上記の「放送倫理検証委員会」のメンバーを見ますと、確かに第三者から構成されており、「番組を作った当人が内容を検証する」ような状態にはなっていないようです。

しかしながら、そもそもBPO自体が、NHKと日本民間放送連盟が設置した第三者機関であり、理事の顔ぶれを見れば、放送関係者が勢揃いです。

BPOについて
(BPOのホームページ。ここから役員の名簿も見ることができます)

IT企業の場合とて、請負側のIT企業内でテストをするわけですから、構図としては同じと言えなくもありません。ですが、IT企業の場合は顧客企業との間に取引関係がありますから、テスト(検証)が不誠実で顧客の信頼を失った場合は、今後の取引中止など営業の継続に深刻な影響が出ます。

しかしながらメディア(本エントリでは、放送メディアのことを指すとします)と視聴者の場合、視聴者は直接の取引相手ではありません。NHKとは受信料支払いという契約関係があるものの、内容が信頼できないからといって容易に契約を解除できないのが現状でしょう。視聴者の信頼失墜は、直接的にメディア側の打撃とはならないわけです。問題をなるべく早く沈静化し、視聴者がそれを忘れてくれさえすれば、何事もなかったかのように営業を続けられるでしょう。メディアの捏造などによって、よほどの被害を被った人でない限り、ほとんどの人は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」となるわけです。

営業停止や広告の放送禁止(NHKの場合は受信料の減額)など、実効性を伴う処分が伴わない限りは、BPOがいくら頑張ってみたところで、おそらくめぼしい効果はあがらないのではないでしょうか。

同時に、メディアに接する側の、メディア・リテラシーの醸成も必要です。